・足音
子どもたちに『地面を強く蹴ろう』と言ってしまうことは正しいのだろうか。これは、その子どもが教室に来る前にどんな環境で育ったかによって変わってくる。
保護者から何も言われずに育ってきた子どもは『地面を強く蹴ろう』と言って構わないと思う。いまの子どもは取っ組み合いの喧嘩をしたことが無く、地面に力を加える感覚が弱い。その場でパパと相撲を取ってもらうと、力を入れる感覚が分かる時がある。フォームがどうこう、腕ふりがどうこうよりも、地面を強く蹴る。これがかけっこの基本だと思う。
しかし保護者から『大きく腕を振れ』『足を高く上げろ』『足を広げて走れ』『あごを引け』『足首は柔らかくしておけ』とアドバイスを受けて育った子どもは、走りに関しては不自然な育ち方をしてきている。その状態で『地面を強く蹴ろう』と言ってしまうと、さらに間違った方向に力を入れてしまうことが多い。
足音は大きく分けて
1.ドカドカ鳴る
2.ザッザッと地面を擦る音
3.パンッと地面を叩く音
がある。
まずドカドカ鳴るのは、足のバネを使えていないからだと思う。足が棒のようになって地面に着いていくので、こん棒を地面に当てるような音が鳴る。軽くなわとびをしてもらい、「この感覚で地面に足を着いてごらん」というと、治ることが多い。
ザッザッと地面を擦るのは2パターンある。
まずブレーキをかけている場合。足を自分の重心よりも前に着いているため、前に向かって足を擦ってしまう。スピードを上げないようにブレーキをかけている状態だ。下り坂を走る時にスピードがあがらないようにする感じ、といえば分かりやすいかもしれない。これは単純に技術が不足している場合と、恐怖心でスピードを上げないようにしている場合がある。女の子でこれが出たときは、無理にスピードを上げる必要はないのかもしれない。
逆に、地面に着いた足を後ろに擦る場合も似たような音が鳴る。いままで地面に置いた足を後ろに蹴って進んでいたため、着いた瞬間に跳ねる動作がうまくいかない場合におきる。このクセが抜けて、地面を弾く感じをつかんでくれると音がしなくなる。
パンッと叩く音に関しては、いままでよく分からなかった。というか、その音がしても問題ないと考えていた。しかし為末大さんの動画によると、足首を固めて走らないとそういう音がするらしい。そして音がしない方がいいという事だった。しかし音を気にしていくよりは、しっかりとした形で走り、その結果、音が無くなるのが理想という話もされていた。
その点に注意しながら指導を進めていきたいと思う。