・腕ふり
腕ふりにおかしなクセが付いている子が多い。
【速く走るためには腕を強く振る必要がある】
これは間違いない。
これを前提として、富士地区の子どもが足が遅い原因を考えていこうと思う。
富士地区では子どもの頃から『腕を大きく振れ!』と言われているせいで、みんな大きく腕を振ろうとしてしまう。
大きく腕を振る場合、手の先が前から後ろにたどり着くまでに0.3秒ぐらいかかる。大きく腕を10回振ったタイムを10で割ると、自分の腕ふりにかかるタイムが分かる。
足が速い子どもは、足が地面に着いて離れるまで0.1秒。少なくとも僕の教室ではこれを目標にしている。
ということは、腕ふりに0.3秒かけてしまうと、足は0.1秒で離れることができるはずなのに、0.2秒待っていなければならない。
そんな無駄な時間を使うぐらいなら、腕を振らないほうがマシ。実際に子どもたちに「腕を振らずに、その代わり自分の一番速いリズムで走ってごらん」というと、その子の人生で一番速く走れることがある。
僕が思うに、腕ふりの働きは3つある。
1.リズムを取る
2.体のねじれを調節する
3.地面に圧をかける
地面に圧をかけるタイミングで腕を強く振る必要があるが、たいていの人が言う『腕を振れ!』はそうではないように感じる。腕を大きく振ることで前に向かうベクトルが発生すると信じている。
例えば、椅子に座った状態で一生懸命腕を振ったとしたら、前に転びそうになるだろうか。(もし転げ落ちた人がいたら連絡ください。)そんなはずはない。おそらく前には進んでいないと思う。腕を振ることで前への推進力は生まれない。
ということで、子どもたちは
-1.腕を大きく振る
というクセを取ることから指導しなければならない。
0.腕を振らない
にすれば、大きく振るよりは速く走ることができると分かってもらえたご両親に、振り子の法則を説明する。手を大きく振ろうとするから遅くなるのであって、肘をたたんで振り子の紐を短くすればコンパクトに振ることができる。腕ふりも0.1秒になればいい。
小学生の間は1.の、リズムを取って走るぐらいでよいのではないかと考えている。中高生になって筋力が付いてくると、地面を蹴った時に体がねじれてしまう。そのときに初めて2.の説明をすればよい。
まだ筋力が弱く、思い切り蹴っても体がねじれない子どもに、ねじれを直すための腕ふりを教えてしまうことは、弊害のほうが大きいと思う。これは検証することはできないけどたぶん正しいんじゃないかな。陸上のトップ選手のフォームをそのまま小学生に降ろさないように気を付けたい。
3.に関しては、地面に自分の体重を当てて、跳ね返りをもらう感覚が身に着いたころに教えればいいと思う。
人間は高く跳ぼうとすると、腕を下に振り下ろしてからジャンプする。腕を上にあげたままジャンプするバレー選手はいないと思う。バレー詳しくないけど。
そのままジャンプするより、腕を振り下ろしたほうが地面からの反発をたくさんもらえる。ということを本能で分かっている。
僕の尊敬する為末大選手はそれをブランコに例えている。ブランコに立って前後にゆすってもうまくいかない。膝を曲げて地面に圧をかけることで、ブランコは大きく漕ぐことができる。
走るときも同様に、地面からの反発をもらって走る。そのときに、ただリズムを取るだけの腕ふりよりは、地面に圧をかけた腕ふりのほうがより大きい反発をもらうことができるので、速く走ることができる。
そのため、速く走るためには腕を強く振る必要がある。
まとめ
ー1.腕を大きく振る →だいたいの子はこの意識で走るので直してあげる
0.腕を振らない →大きく振るよりは速く走れる
1.リズムを取る →小学生はこれでじゅうぶん
2.体のねじれを調節する →蹴って体がねじれるほど筋力がついてきたら教える必要がでてくる
3.地面に圧をかける →最終的にはこういう技術も必要