足を地面に着く③
今回は、力の入れ方と地面との関係。
気を付けの姿勢から、右膝を曲げる。右膝を伸ばす。
簡単な動作だ。走る時も膝を曲げたり伸ばしたりしている。しかし、この動作を続けていると、あることに気づく。それは、膝を伸ばした時に、足が地面を擦るように着いてしまう、しかもブレーキをかける方向に着いている。ということだ。
大前提として、走る時に大切なのはブレーキをかけないということ。それは短距離でも長距離でも変わらない。何も考えずに膝を曲げ伸ばししてしまうと、地面を後ろから擦ってしまう。
速く走る時は地面を前から後ろに蹴りながら進むのではなく、上から下にぶつかり跳ね返る感じで進む。スキップに似ている。スキップは2回ずつ地面を弾く。それを1回にすると、走るフォームにとても近い。
日本では走る時に『ももを上げろ!』と言われることがある。ももが高く上がっている方がなんとなく格好良く見えるのかもしれない。強く下げるために上げるのであって、上げる方に力を入れてしまっては遅くなる。本末転倒だと思う。
アメリカの陸上コーチは『Push!(押せ!)』と言う。地面を上から下に押して前に進むイメージ。地面を押した反動で足が上がるのであって、足を上げようと思って上げているわけではない。
ジャマイカでは『Cycling(自転車を漕ぐように)』というイメージらしい。足が円を描くように回る。前から地面に当たるため、前への推進力が生まれる。
ちなみに教室ではアメリカ式とジャマイカ式の両方を試してもらい、感覚がいいほうを採用してもらう。僕が見た感じと違ってても、自分の感覚を大事にする。
日本式のももを上げる走り方にはデメリットがもう1つある。それは、ももを上げすぎると、地面に着いている方の膝が曲がってしまうことだ。膝が曲がってしまうとバネが使えない。体幹、股関節、膝が真っすぐになり、一本のバネになって跳ね返るのが理想である。
ある程度スピードが付いてくると、スタート直後はアメリカ式でもいいが、スピードが乗ってくるとジャマイカ式の方がタイムが出ることが分かってくる。それは外から教えられるものではなく、自然にその動きになることが望ましい。